2026.07.22

第54回(2026年4月) 不動産投資家調査にみる日本の不動産市場の現状と展望

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サマリー
❍ 期待利回りは全体的に横ばいの傾向が継続しており、多くの投資家がピークと考えている可能性が高い。
 一方、「積極的に投資をする」スタンスを変えていない投資家が多く、価格水準は高止まりを維持しているものと考えられる。

❍ 今後の成長要因について、最多は「市場参加者の多様化(海外勢や公的年金・政府系ファンドのさらなる参入)」を上げており、
 投資家層の裾野が広がることが期待されている。

❍ 今後のリスク要因については、約86%の回答者が「金利の上昇」を上げており、日本銀行の金融政策に対して、警戒感が見られる。
 次いで「建築費の高騰、管理費等ランニングコストの上昇」が約51%となっている。

不動産鑑定

主要セクターの期待利回りとその変化

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日本不動産研究所の不動産投資家調査は、投資家の動向や市場の利回り、投資意欲などを把握するための定期調査であり、市場分析や戦略立案に活用されている。

2026年4月に実施された「第54回 不動産投資家調査」によると、日本の不動産投資市場(期待利回りの動向)は、アセットにより一部地域で低下が見られたが、横ばいの地域が多くを占める結果となった。
この結果は、前回調査と同様の傾向が継続している。

まず、主要都市におけるAクラスビル(最上級グレードのオフィスビル)の期待利回りについては、「東京・丸の内、大手町」で3.2%となり、7期連続で横ばいを維持している。
他の東京エリアや政令指定都市でも同様に、期待利回りは概ね横ばいの状態が続いている。

賃貸住宅分野では、「東京・城南」のワンルームタイプは3.6%、ファミリータイプで3.7%と、どちらも0.1%低下となった。
また、地方都市ではワンルームタイプで0.1%で低下する地区があったが、ファミリータイプでは全ての地区で横ばいの結果となった。

期待利回りが、長期的に横ばいであることは、「不動産価格が上限圏に達しつつある」と投資家が考えていることを示唆している可能性がある。

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商業店舗・物流施設・倉庫・ホテルの動向

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商業店舗は、「都心型高級専門店」は横ばいと低下が混在したが、「銀座」は3.3%で3期連続の横ばいであった。
「郊外型ショッピングセンター」についても横ばいと低下が混在し、「東京」は5.0%で横ばいの結果となった。


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物流施設(マルチテナント型)は湾岸部の「東京(江東区)」は3.8%で5期連続の横ばい、内陸部の「東京(多摩地区)」では4.0%で3期連続の横ばいとなり、全ての調査地区で横ばいとなった。


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ホテルは、「東京」は4.1%で0.1 %低下、また「名古屋」「京都」「福岡」の3 地区でも0.1 %低下の結果となった。
訪日外国人は、2025年は約4,270万人で、過去最高だった2024年(約3,690万人)を約580万人上回り年間過去最高を更新した。
特に観光・宿泊需要が集中する人気の都市では、稼働率・客室単価が大幅に上昇していることが思料される。

ビジネスホテルやシティホテルの今後の見通しについて、投資家の約40~50%が 「ややポジティブ」な状況が2年後の2028年頃まで続くと見込んでいる。


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投資家の姿勢と今後の不動産投資市場の成長・リスク要因

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投資姿勢に関する調査では、「新規投資を積極的に行う」との回答が93%で1%低下し、「当面、新規投資を控える」との回答は3%上昇し2期ぶりに5%となった。

また、「既存所有物件を売却する」との回答は2%上昇し28%となった。
緩和的な金融環境は維持されており、不動産投資家の非常に積極的な投資姿勢が維持されている。


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今後の成長要因については、「投資アセットの多様化」や「市場参加者の多様化(海外勢、公的年金、政府系ファンドなど)」が多くの回答を集めている。 (回答数142社)


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反対に、リスク要因としては「金利の上昇」が最も多く122社(約86%)、次いで「建築費の高騰、管理費等ランニングコストの上昇」が73社(約51%)と続き、前回調査と同様の傾向が継続している。 (回答数142社)

日銀は2024年3月にマイナス金利を解除して以降、少しずつ利上げを続けており、2026年6月には政策金利を1.0%に引き上げた。
これは1995年以来、約31年ぶりの高い水準である。
この1.0%という水準は、景気を過熱も抑制もしない「中立金利」の推計レンジの下限に近いとされ、今後もインフレの動向次第でさらに利上げが続く可能性があるとみられている。

一方、長期金利(10年国債の利回り)はより大きく上昇しており、2026年7月には一時2.87%と、約30年ぶりの高い水準となった。
これは日銀の利上げ観測に加え、財政運営に対する市場の懸念など、複数の要因が影響しているとみられる。


不動産投資の観点では、長期金利の上昇は借入コストの上昇や利回り水準の見直しにつながるため、今後の政策動向を注視する必要がある。


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CRE戦略と資産評価の重要性について

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日本不動産研究所が実施した「第54回 不動産投資家調査」(2026年4月現在)の結果では、期待利回りは主要アセットで概ね横ばいを維持しつつも、商業店舗やホテルの一部エリアで低下が見られ、賃貸住宅では東京・城南のワンルームタイプが3.6%、ファミリータイプが3.7%と、いずれも0.1ポイント低下するなど、価格上昇の裾野が広がりを見せている。

一方、投資姿勢については「新規投資を積極的に行う」との回答が93%(前回比1%低下)、「当面、新規投資を控える」が5%(同3%上昇)、「既存所有物件を売却する」が28%(同2%上昇)となり、これまでの一本調子の強気姿勢から、選別と入れ替えを意識した、より戦略的な投資行動へと投資家の目線が変化しつつあることが浮き彫りとなった。


今後の成長ファクターとしては「市場参加者の多様化(海外勢や公的年金・政府系ファンド等のさらなる参入)」が最も多くの回答を集め、次いで「投資アセットの多様化」が続いた。

一方、リスク要因としては引き続き「金利の上昇」が突出して高い水準にあり、日本銀行の金融政策運営に対する投資家の警戒感は根強いままである。
こうしたマクロ環境の変化を受け、企業が自ら保有する不動産(CRE:Corporate Real Estate)の活用方法を抜本的に見直す動きが、経営上の最重要課題の一つとして浮上している。

不動産鑑定の視点においては、単なる過去の延長線上にある評価ではなく、変化する市場環境下での時価を的確に把握することが不可欠である。
対象不動産のポテンシャルを最大限に引き出す「最有効使用」の分析を、最新の投資家マインドを反映させながら精緻に行うことは、企業の経営判断を支える基盤となる。
資産の客観的な価値を知ることは、リスク管理のみならず、攻めの経営に転じるために必要な要素である。


また、不動産コンサルティングの領域では、CRE戦略の見直しが加速する中で、従来の枠組みに捉われない柔軟な助言が求められている。
物件の売却によるキャッシュフローの創出、再開発による資産価値の向上、あるいは賃貸化による安定収益の確保など、多様な選択肢を比較検討し、企業価値を最大化させるためのシナリオを描くことが重要となっている。

特に近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)への対応や、事業ポートフォリオの最適化といった潮流の中で、不動産を「単なる施設」ではなく、企業の競争力を生む「重要な経営資源」として位置づける動きがかつてないほど強まっている。
今後は、データに基づいた定量的な資産評価と、経営戦略に合致した定性的な提案を組み合わせた、より専門性の高いトータルサポートが不可欠となる。
資産の「守り」と「攻め」の両面を考慮した戦略的なアプローチこそが、次なる成長を支える鍵となるはずである。



弊社では、これまでの豊富な知見に基づき、CREの資産評価や有効活用、さらには事業再構築に向けた戦略立案に関するご相談を随時承っております。
現在の保有資産に関する具体的な課題や、将来的な活用方針へのご関心がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
お客様の経営課題に寄り添い、最適な解決策をご提案させていただきます。




本記事におけるグラフ・表に関する出典

出典:一般財団法人日本不動産研究所

  :「第54回 不動産投資家調査(2026年4月現在)の調査結果」



Writer's Profile

執筆者
スターツコーポレートサービス株式会社
中川 貴雄(なかがわ たかお)

経歴

2007年3月近畿大学大学院総合理工学研究科修士課程修了。
同年4月スターツグループ入社。企業向けの不動産投資、売却のアドバイザリーに従事し、2020年9月に不動産鑑定士に登録。
2023年7月 東京都不動産鑑定士協会 災害支援対策委員・総務財務委員に、
2024年4月 東京都不動産鑑定士協会の推薦を受け、東京都武蔵野市の固定資産評価審査委員会委員に就任。
不動産のプロとして、数多くの企業の資産コンサルティングを手掛けている。

不動産鑑定士




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