2026.09.10

法人による不動産投資とは|個人との違い・目的の類型・検討時の観点

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事業で得た資金の使い道を検討するなかで、不動産の取得が選択肢に挙がることがあります。
自社で使う拠点を確保したい、遊休となっている資金を資産として保有したい、既存の土地をより有効に使いたいなど、動機はさまざまです。

ただし、法人が不動産に投資する場合、個人が同じことを行う場合とは、意思決定の手順も、財務への影響も、税務や会計上の取り扱いも異なります。
しかも、不動産は取得すれば長期にわたって貸借対照表に残り続け、事業環境が変わっても簡単には動かせません。
したがって、判断にあたっては目先の収支だけでなく、事業計画との整合、資金繰りへの影響、将来の見直し余地まで含めて検討する必要があります。

本記事では、法人による不動産投資について、個人での投資との違い、取得や保有の目的の類型、検討時に確認すべき観点、資金調達と財務への影響、税務・会計上の主な論点、想定されるリスク、そして検討から取得までの進め方を順に整理します。

なお、個別の判断は企業の状況によって大きく変わるため、実際の検討にあたっては税理士や金融機関など専門家への相談を前提としてお読みください。

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法人による不動産投資とは|個人での投資との違い

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法人による不動産投資とは、企業が事業活動の一環として不動産を取得し、自社で利用したり、賃貸によって収益を得たり、資産として保有したりすることを指します。

個人が資産形成の手段として不動産を購入する場合と、外形的には同じ取引に見えますが、実務上の性格は大きく異なります。
最も大きな違いは、法人の場合、その取得が事業活動の一部として位置づけられ、事業計画や資本の使い方との整合を問われる点にあります。
取得の是非は個人の判断ではなく、社内の意思決定の手順を経て決まり、その根拠は取締役会や株主に対して説明できるものでなければなりません。

また、取得した不動産は事業用の資産として貸借対照表に計上され、財務指標にも影響します。
したがって、法人における不動産投資は、資産運用というよりも、経営資源の配分に関する意思決定として捉えるのが実態に近いといえます。

契約と意思決定の主体が企業になる

個人の取引では、購入する本人が契約の当事者となり、資金調達においても個人の収入や信用が審査の対象になります。
法人の場合は、企業が契約の当事者となり、審査の対象も企業の事業内容や財務状況に移ります。
必要となる書類も、登記事項証明書や決算に関する資料など法人特有のものになり、社内では稟議や決裁といった手続きを経る必要があります。

金額の規模によっては取締役会の決議を要する場合もあるため、意思決定に要する期間を見込んだうえで検討を進めなければ、条件のよい物件を検討している間に機会を逃すことにもなりかねません。

あわせて、誰がどの範囲まで判断できるのかという権限の線引きを、検討の初期段階で確認しておくことが実務上は重要になります。

目的が収益の獲得だけとは限らない

個人の不動産投資では、賃料収入や売却時の差益といった収益の獲得が主たる目的になることが一般的です。
これに対して法人の場合、目的はより多様です。

自社で使う拠点を確保するための取得、既存の遊休資産を活用するための取得、福利厚生としての住まいを確保するための取得など、収益の獲得を直接の目的としないものも含まれます。
したがって、判断の基準も一律ではありません。

収益を目的とする取得であれば投じた資本に対する成果が基準になりますが、自社利用が目的であれば、賃借した場合との比較や事業継続性の観点が基準になります。
検討を始める前に、何を目的とした取得なのかを社内で明確にしておかなければ、評価の軸が定まらず、議論がかみ合わなくなります。

法人が不動産を取得・保有する目的の類型

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法人が不動産を取得する目的は、大きくいくつかの類型に整理できます。
どの類型に当てはまるかによって、検討すべき観点も、成果を測る指標も変わります。
実際には複数の目的が重なることもあり、たとえば自社で使う建物の一部を賃貸に回すといった形も珍しくありません。
重要なのは、主たる目的を明確にしたうえで、副次的な目的をどう位置づけるかを整理しておくことです。
目的が曖昧なまま検討を進めると、判断の基準が場面ごとに変わり、社内の合意形成も難しくなります。

ここでは、実務で見られる代表的な四つの類型を確認します。
目的を文書として整理しておけば、社内で検討が長期化しても前提が揺らぎません。

自社で利用する拠点を確保する

本社、営業拠点、工場、倉庫、店舗といった事業に直接使う不動産を、賃借ではなく取得によって確保する類型です。
長期にわたって同じ場所で事業を継続する前提が固い場合、賃料の支払いを続けるよりも支出を安定させられる可能性があります。
自社の仕様に合わせた設計や改修を行いやすい点も利点です。

一方で、取得時にまとまった資金が必要になり、事業環境が変わっても拠点を簡単には移せません。
したがって、判断にあたっては、賃借した場合との比較を、期間全体を通じた支出と事業の見通しの両面から行う必要があります。
将来の事業計画に不確実性が大きい局面では、賃借によって柔軟性を確保するという判断も十分に合理的です。

判断の根拠は資料として残し、後年の検証に使える形にしておいてください。

賃貸による収益を得る

取得した不動産を第三者に賃貸し、賃料収入を得ることを目的とする類型です。
事業で得た資金の運用先として検討されることもあれば、既存事業と関連する形で不動産事業を立ち上げる場合もあります。
この類型では、稼働の状況が成果を直接左右するため、立地や建物の条件、賃貸需要の見通しが検討の中心になります。

また、賃貸を事業として行う場合には、管理業務が継続的に発生します。
自社で担うのか外部に委託するのかという体制の設計も、取得の判断と同時に検討しておくべき事項です。

なお、賃貸住宅の管理業務や、賃借した住宅を第三者に転貸する事業については法令上の規律が設けられているため、事業の形態によっては該当の有無を確認する必要があります。

遊休となっている資産を活用する

既に保有しているものの、現時点で事業に使われていない土地や建物を活用する類型です。
新たに取得するわけではありませんが、活用のために建物を建てたり改修したりする場合には、実質的に投資の判断を伴います。

遊休の状態が続いている資産は、維持のための費用や税負担が発生し続ける一方で成果を生んでいないため、活用か処分かの判断が求められます。
活用を選ぶ場合は、その用途に対する需要があるか、必要な投資に見合う成果が見込めるか、運用にどれだけの体制が必要かを検証します。

判断にあたっては、処分した場合との比較も同時に行い、どちらが事業と財務の観点から適しているかを整理してください。
検討の結果は記録に残し、判断を先送りした場合もその理由を明示しておくべきです。

福利厚生としての住まいを確保する

社宅や寮として使う住居を、賃借ではなく取得によって確保する類型です。
特定の拠点に一定数の従業員を長期にわたって配置する前提が固い場合には、選択肢になり得ます。
ただし、取得すれば建物は資産として計上され、修繕や大規模改修、老朽化後の建て替えや処分まで含めた長期の責任を負うことになります。
従業員数の増減や拠点の再編があっても建物はすぐには動かせないため、必要な戸数が安定して見込めるかどうかが判断の前提です。

また、住まいを従業員に貸与する場合には税務上の取り扱いが定められており、負担額の設定によっては給与として課税される可能性があります。
制度の設計にあたっては、国税庁が示す考え方を踏まえ、専門家の確認を受けながら進めることをおすすめします。

検討時に確認しておきたい観点

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目的が定まったら、次は個別の案件を評価する段階に進みます。
ここで重要なのは、評価の観点をあらかじめ定め、複数の候補を同じ基準で比較できる形に整えておくことです。
物件ごとに異なる材料で議論すると、担当者の印象に判断が左右されやすくなり、社内の合意形成も難しくなります。

また、取得時の条件だけでなく、保有している期間を通じて発生する事項や、将来手放す局面までを視野に入れて確認しておく必要があります。

以下の表は、検討の際に押さえておきたい代表的な観点を整理したものです。
案件の性格に応じて項目を加減しながら、社内の評価様式として活用してください。評価の様式を定めておけば、担当者が交代しても検討の質を保てます。

目的との整合
事業計画のどこに位置づくか
→目的が曖昧だと評価の基準が定まらない

権利関係
所有権、借地権、共有関係、担保の状況
→後の活用や処分の可否を左右する

法令上の制約
用途や建築に関する規制、条例の定め
→想定した用途で使えない可能性がある

建物の状態
構造、築年、設備の更新履歴、修繕の予定
→保有期間中に必要となる支出に直結する

収支の見通し
想定する収入と、維持に要する支出
→稼働しない期間も含めた前提で検証する

資金調達
調達の方法、返済の負担、財務への影響
→資金繰りと財務指標の両面に影響する

出口の想定
将来の売却可能性や用途転換の余地
→事業環境が変わった際の選択肢を確保する

このうち特に見落とされやすいのが、出口の想定です。
取得の検討段階では取得後の運用に関心が集中しがちですが、事業環境が変われば、その不動産が不要になる局面も想定されます。
そのときに手放せるのか、別の用途に転換できるのか、権利関係や法令上の制約が障害にならないかを、取得の前に確認しておく必要があります。

あわせて、建物の状態については、取得時の外観だけでなく、構造や設備の更新履歴、今後必要となる修繕の見通しまで確認しておくべきです。専門的な調査を要する部分もあるため、必要に応じて外部の専門家に依頼し、判断の材料として社内で共有できる形に整えてください。
確認した内容は社内で共有し、判断の記録として残しておいてください。

資金調達と財務への影響

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調達の方法と返済の負担

不動産の取得には、自己資金を充てる方法と、金融機関からの借入によって調達する方法があります。
自己資金で取得すれば返済の負担は生じませんが、その分の資金を他の用途に振り向けられなくなります。
借入によって取得すれば手元の資金を残せる一方、返済が継続的な負担として発生し、金利の動向によっては負担が変動する可能性もあります。

どちらを選ぶかは、手元資金の水準、既存の借入の状況、今後の事業計画における資金需要によって判断が変わります。
金融機関との協議は早い段階で始め、調達の可否と条件の見通しを踏まえたうえで案件の検討を進めると、条件が折り合わずに検討が無駄になる事態を避けられます。
調達に関する協議の経過も記録し、社内で共有できる形に整えておくべきです。

貸借対照表と財務指標への影響

取得した不動産は資産として計上され、借入によって取得した場合は負債も同時に増加します。
その結果、総資産が増え、自己資本比率をはじめとする財務指標に影響します。
金融機関との取引や、外部への説明の場面において、こうした指標の変化がどう受け止められるかも、判断にあたって考慮すべき要素です。

また、投じた資本に対してどれだけの成果を生んでいるかという観点からの評価も避けられません。
事業への貢献が小さい不動産を長く保有していると、資本の効率という点で説明が難しくなります。

取得の判断にあたっては、財務面での影響を試算し、経営層と共有したうえで進めることが求められます。
試算の前提条件も記録に残し、後年の検証に使える形にしておいてください。

税務・会計上の主な論点

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不動産の取得と保有には、複数の税や会計上の取り扱いが関わります。
取得の段階、保有している期間、そして手放す段階のそれぞれで論点が生じるため、全体像を把握したうえで検討する必要があります。

ここで重要なのは、制度の詳細を自社だけで判断しようとしないことです。
適用の可否は個別の事情によって変わることが多く、判断を誤れば後になって修正が必要になります。
制度の概要を把握したうえで、実際の適用については税理士など専門家に確認しながら進めるのが実務的です。

以下では、検討にあたって押さえておきたい代表的な論点を整理します。
制度は改正されることがあるため、検討の時点で最新の情報を確認する必要があります。
判断の根拠として参照した資料も、記録に残しておくと後の確認が容易です。

減価償却と耐用年数

建物や設備といった資産は、時間の経過とともに価値が減少していくものとして、取得に要した金額を一定の期間にわたって費用として計上していく処理が行われます。
この処理を減価償却と呼び、対象となる期間は資産の構造や用途に応じて定められています。

土地については、時間の経過によって価値が減少するものとは扱われないため、この処理の対象にはなりません。
したがって、同じ不動産であっても、土地と建物では取り扱いが異なります。
取得の際には、契約上どのように区分されているかを確認しておく必要があります。

具体的な計算方法や適用の詳細は制度の定めによるため、国税庁が公表する情報を確認したうえで、税理士に相談しながら進めてください。

取得時と保有期間中に生じる負担

不動産の取得にあたっては、売買代金のほかに、登記に関する費用、契約に関する費用、仲介を利用する場合の手数料といった支出が発生します。
仲介手数料については、宅地建物取引業法によって上限が定められており、実際の請求額は取引の内容や当事者間の合意によって変わるため、見積書の段階で内訳と根拠を確認しておくことが重要です。

また、取得の段階と保有している期間のそれぞれで、税負担が生じます。
これらは事業の収支にかかわらず発生するため、収支の見通しを立てる際には必ず織り込んでおく必要があります。

制度の内容は改正されることもあるため、検討の時点で最新の情報を確認してください。
見積書は費目を揃えた形式で取得し、複数の候補を比較できる状態に整えてください。

賃貸に供する場合と手放す場合の取り扱い

取得した不動産を賃貸に供する場合、賃料収入は事業の収益として扱われ、維持管理に要した支出は費用として処理されます。
空室が生じている期間も維持のための支出は発生するため、稼働の状況によって収支は変動します。

また、手放す場合には、売却によって生じた損益が事業年度の業績に反映されます。
帳簿上の価額と売却の価額に差がある場合、その差が損益として計上されるため、財務への影響は取得時の想定と異なることがあります。

いずれの局面でも、取り扱いは個別の事情によって変わり得るため、判断の前に専門家に確認することを前提として検討を進めてください。
収支の記録は定期的に残し、取得時の想定との差を確認できる形にしておくべきです。

想定されるリスクと注意点

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稼働しない期間の負担

賃貸による収益を目的とする場合、入居や利用がない期間も、維持管理の費用や借入の返済は発生し続けます。
稼働の見通しは、立地や建物の条件、周辺の需要によって変わり、取得時の想定どおりに推移するとは限りません。
したがって、収支の試算にあたっては、稼働が十分に得られなかった場合を含む複数のパターンを置き、最も保守的な想定でも事業として成り立つかを検証しておく必要があります。

自社利用が目的の場合でも、事業計画の変更によって使わない部分が生じる可能性があります。
稼働の状況を定期的に記録し、想定との差が拡大した場合に見直しを検討する仕組みを、取得の段階から用意しておいてください。
見直しの判断基準も、あらかじめ定めておくと対応が遅れません。

流動性の低さと見直しの難しさ

不動産は、他の資産と比べて短期間で現金化することが難しい資産です。
手放そうとしても、条件の合う相手が見つかるまでに時間を要し、想定した条件で成立するとは限りません。
事業環境が急に変わった場合でも、資産の構成をすぐには変えられないという性格は、取得の判断にあたって前提として認識しておくべきです。
この性格を踏まえると、取得の可否を検討する段階で、将来手放す局面や用途を転換する局面を想定しておくことの重要性が理解できます。

権利関係が複雑な物件や、法令上の制約が強い物件では、選択肢がさらに限られる点にも注意が必要です。
取得の段階で複数の出口を想定しておくことが、後の選択肢を広げます。
想定は文書として残しておいてください。

金利の動向と資金繰りへの影響

借入によって取得する場合、返済の負担は長期にわたって続きます。
金利の条件によっては、負担の額が期間中に変動する可能性もあり、事業の収支と資金繰りの両面に影響します。
返済が事業の資金需要を圧迫すれば、本業への投資余力が失われることにもなりかねません。
したがって、取得の判断にあたっては、返済の負担を織り込んだうえで、今後の事業計画に必要な資金を確保できるかを確認しておく必要があります。

金融機関との協議のなかで、条件の見通しや変動の可能性についても説明を受け、社内で共有できる形に整理しておくことをおすすめします。
返済計画は事業計画と並べて確認し、経営層と共有したうえで判断してください。
協議の経過も記録に残しておくべきです。

建物と法令に関する制約

建物には、構造や設備の状態に応じて、保有している期間中に修繕や更新が必要になります。
取得の時点で状態を十分に確認していないと、想定していなかった支出が後から発生します。

また、用途や建築に関する法令上の規制、地域ごとの条例の定めによって、想定した使い方ができない場合もあります。
既存の建物については、現行の規制との関係を確認しておく必要があるものもあります。
これらは専門的な確認を要する領域であるため、必要に応じて外部の専門家に調査を依頼し、その結果を判断の材料として社内で共有できる形に整えてください。

確認を省略したまま取得を進めることは避けるべきです。
調査に要する期間も、検討の日程に見込んでおく必要があります。

検討から取得までの進め方

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ステップ1:目的と判断の基準を社内で定める

最初に、何を目的とした取得なのかを社内で明確にし、その目的に照らして案件を評価する基準を定めます。
自社利用が目的なのか、賃貸による収益が目的なのか、既存資産の活用が目的なのかによって、評価すべき観点も、成果を測る指標も変わります。

あわせて、投じられる資金の上限、想定する保有の期間、許容できるリスクの範囲についても、この段階で整理しておいてください。
誰がどの範囲まで判断できるのかという権限の線引きと、意思決定に要する期間の見通しも確認しておくと、案件が具体化した際に判断が滞りません。

基準は文書として残し、関係する部署で共有しておくべきです。
基準が定まっていない状態で候補の検討を始めると、議論が振り出しに戻ります。

ステップ2:候補を収集し、同じ基準で比較する

基準が定まったら、条件に合う候補を集め、同じ形式で比較できる資料に整理します。
物件ごとに記載項目が異なる資料が並ぶと、社内での整理作業が担当者の負担として残り、判断も印象に左右されやすくなります。
権利関係、法令上の制約、建物の状態、収支の見通し、資金調達の見込みといった項目を揃えて整理してください。

この段階では、専門的な確認を要する事項が数多く出てくるため、外部の専門家や金融機関と並行して協議を進めることになります。
判断に必要な情報が揃わない候補については、不足している情報を明示したうえで、優先度を下げて扱うのが実務的です。
比較の資料は社内の決裁にもそのまま使える形式に整えておくと効率的です。

ステップ3:詳細な確認を行い、条件を交渉する

有力な候補が絞り込まれたら、現地の確認と詳細な調査を行います。
建物の状態、設備の更新履歴、周辺の環境、権利関係の裏付けといった事項について、資料だけでなく実地で確認することが重要です。

並行して、価格をはじめとする条件の交渉を進めます。
交渉の余地は契約の締結前が最も大きく、締結後に条件を変更することは容易ではありません。
契約書の内容については、社内の法務担当や外部の専門家の確認を受けたうえで進めてください。
調査の結果によっては、当初の想定と異なる条件が判明することもあるため、判断を差し戻せる節目をあらかじめ設けておくと安全です。

確認した内容と交渉の経過は記録に残し、社内で共有できる形にしておいてください。

ステップ4:取得後の運用体制を整える

取得の決定と並行して、取得後の運用をどう行うかを設計します。
自社利用であれば、拠点の運営と建物の維持管理を誰が担うのかを定めます。
賃貸に供する場合は、入居者の募集、契約の管理、日常の対応をどこまで自社で担い、どこから外部に委託するのかという線引きが必要です。

あわせて、稼働の状況、収支の推移、修繕の予定といった情報を記録し、定期的に確認する仕組みも用意しておいてください。
取得の判断に用いた想定と実際の推移を比較できる形にしておけば、次の案件を検討する際の材料にもなり、保有を継続するかどうかの判断にも根拠を持たせられます。
体制が定まらないまま取得を進めると、運用の負担が特定の担当者に集中します。委託する範囲も同時に検討してください。

法人の不動産投資に関するよくある質問

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Q. 法人と個人のどちらで取得するほうが有利ですか。
一概には言えず、企業と個人それぞれの状況によって判断が変わります。
取り扱いが異なる項目が複数あるため、税負担、資金調達の条件、意思決定の手続き、将来の承継といった観点を総合的に比較する必要があります。
また、法人で取得する場合は、その取得が事業活動としてどう位置づくのかを説明できることが前提になります。
個別の事情によって結論は変わるため、比較の検討にあたっては税理士など専門家に相談し、自社の状況に即した判断材料を得たうえで決めることをおすすめします。一般論だけで結論を出すことは避けるべき論点です。
検討にあたっては、判断に用いた前提と結論を記録として残しておいてください。比較の観点を先に整理しておくと議論が進みます。


Q. 自社で使う拠点は、取得と賃借のどちらがよいですか。
事業の見通しと資金の状況によって判断が分かれます。
長期にわたって同じ場所で事業を継続する前提が固く、資金にも余裕があるのであれば、取得によって支出を安定させるという判断に合理性があります。
一方、事業計画に不確実性がある場合や、拠点の再編が想定される場合には、賃借によって柔軟性を確保するほうが適しています。
比較にあたっては、期間全体を通じた支出だけでなく、財務指標への影響、見直しのしやすさ、事業継続性といった観点も含めて検証してください。どちらか一方が常に有利ということはなく、前提条件によって結論は変わります。
比較の結果は資料として整理し、社内で共有したうえで判断してください。前提が変われば結論も変わる点に留意してください。


Q. 社宅や寮のために不動産を取得することはできますか。
可能ですが、判断にあたっては慎重な検証が必要です。
特定の拠点に一定数の従業員を長期にわたって配置する前提が固いのであれば選択肢になりますが、必要な戸数が変動する場合、稼働しない住戸が費用として残ります。
取得せずに賃借によって確保する方法や、住宅手当として現金を支給する方法との比較も同時に行うべきです。
なお、社宅や寮として貸与する場合の税務上の取り扱いについては、本記事の前段で触れたとおり負担額の設定に注意が必要です。
制度の設計にあたっては、国税庁が示す考え方を踏まえ、専門家の確認を受けながら進めてください。


Q. 取得した不動産の見直しは、どのタイミングで行うべきですか。
定期的に検証する仕組みを作っておくことが基本です。
事業計画の見直しの時期、決算の時期、大規模な修繕の検討時期といった節目を、あらかじめ検証の機会として定めておくとよいでしょう。検証にあたっては、稼働の状況、収支の推移、建物の状態、事業計画との整合といった観点から、保有を継続するのが妥当かを確認します。
企業が保有または使用する不動産を経営資源として捉え、企業価値の観点から構成を見直していく考え方は、国土交通省が公表する資料でも整理されています。
判断の根拠は記録として残し、次回の検証の際に前回からの変化を確認できる形にしておいてください。
検証の担当と頻度を定め、通常の業務のなかに位置づけておくと継続できます。

まとめ:法人の不動産投資は「目的の明確化」と「出口の想定」から

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法人による不動産投資は、個人の資産形成とは性格が異なり、事業計画と資本の配分に関する意思決定として扱うべきものです。
取得の目的が自社利用なのか、賃貸による収益なのか、既存資産の活用なのか、福利厚生としての住まいの確保なのかによって、評価すべき観点も、成果を測る指標も変わります。
したがって、検討の最初に目的を明確にし、それに応じた判断の基準を社内で定めることが出発点になります。

案件の評価にあたっては、権利関係、法令上の制約、建物の状態、収支の見通し、資金調達と財務への影響に加えて、将来手放す局面や用途を転換する局面までを想定しておく必要があります。
不動産は短期間で現金化しにくく、取得すれば長期にわたって財務に影響し続けるためです。
税務や会計上の取り扱いは個別の事情によって変わり得るため、制度の概要を把握したうえで、実際の適用については税理士など専門家に確認しながら進めてください。

取得後も、稼働の状況と収支の推移を記録し、定期的に検証する仕組みを持つことが、判断を継続的に見直すための前提となります。




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執筆者
スターツコーポレートサービス株式会社 COPPO!編集部

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