移転しても人が集まらないオフィスの共通点|出社したくなり交流が生まれる場のつくり方と進め方

コストや手間をかけてオフィスを移転したのに、いざ新しい拠点に移ってみると、思ったほど社員が出社してこない。
フロアはきれいになったけれど、部署を越えた会話はあまり生まれず、なんとなく静かなまま——。
そんな『移転したのに人が集まらない』という悩みは、決して珍しいものではありません。
立地を良くし、内装を新しくすれば人は自然に集まる、というわけではないのです。
実際に社員が出社したくなり、そこで交流が生まれているオフィスには、いくつかの共通点があります。
それは特別な設備やデザインそのものではなく、『何のために出社するのか』という目的から場を設計しているかどうかにあります。
この記事では、移転しても人が集まらないオフィスに共通する背景を整理したうえで、
出社したくなり交流が生まれる場をつくる3つの視点と、実際に進めるための4つのステップを解説します。
Contents
移転しても人が集まらないオフィスに共通する3つの背景

せっかく移転しても人が集まらないのには、いくつかの共通した理由があります。
多くの場合、それは立地や設備の不足そのものではなく、場をつくる前の『考え方』の部分にあります。
まずはその背景を押さえておきましょう。
ここを理解しておくと、同じ費用と労力をかけても、人の集まるオフィスと集まらないオフィスの分かれ目がどこにあるのかが見えてきます。
「わざわざ出社する理由」が用意されていないから
在宅でも多くの仕事が完結するようになった今、社員が出社するかどうかは『そこに行く理由があるか』で決まります。
自席で一人で作業するだけなら、家でもできてしまいます。
移転の際に、対面だからこそ価値がある活動——たとえば顔を合わせての相談や、チームでの共同作業、偶然の会話——を後押しする場が用意されていないと、出社する動機そのものが生まれません。
きれいになっただけのオフィスは、行く理由の乏しい場所になりがちです。
逆に言えば、出社したくなる場には、家では得られない価値がはっきりと用意されている、という共通点があります。
人が集まるかどうかは、その価値を意図して設計できているかにかかっているのです。
目的を決めずに、見た目や面積から入ってしまったから
移転を『内装を刷新する機会』や『面積を調整する機会』として捉え、デザインや広さから先に決めてしまうと、肝心の『このオフィスで社員にどう働いてほしいか』という目的が後回しになります。
目的が定まらないまま空間を作ると、見た目は整っていても、実際の働き方とかみ合わない場所になってしまいます。
人が集まる場には、必ずといってよいほど、はっきりとした目的意識が土台にあります。
移転がゴールになり、その後の運用が置き去りになるから
移転は準備も労力も大きいため、無事に移り終えると、そこで一段落と感じてしまいがちです。
しかし、新しいオフィスをどう使ってほしいのかが社員に伝わっていなかったり、使い方のルールが曖昧なままだったりすると、せっかくの空間が活かされません。
移転はスタート地点であって終点ではない、という意識が抜けると、人の集まらない状態が固定化してしまいます。
出社したくなり交流が生まれる場をつくる3つの視点

人が自然に集まり、交流が生まれるオフィスにするには、次の三つの視点が役立ちます。
事例に共通して見られる考え方でもあります。
視点① 出社する目的から場の役割を決める
まず大切なのは、『社員にこのオフィスで何をしてほしいのか』という目的から逆算して場を設計することです。
対面での相談を増やしたいのか、部署を越えた協業を生みたいのか、来客との交流を深めたいのか。
目的が定まれば、それに合った場所——集中する場所、話し合う場所、気軽に立ち寄れる場所——の役割が自然と決まります。
デザインや面積は、その目的を実現するための手段として後から考えるのが、人の集まる場づくりの順序です。
順序が逆になり、見た目や広さから決めてしまうと、立派だけれど誰のための場なのかが曖昧なオフィスになってしまいます。
目的というものさしがあってはじめて、限られた面積を何に使うべきかの優先順位もはっきりします。
視点② 偶然の会話が生まれる動線と居場所をつくる
二つ目は、社員同士が自然にすれ違い、ふとした会話が生まれるような動線と居場所を意識することです。
全員が自席にこもる配置ではなく、行き来のなかで顔を合わせやすい経路を設けたり、気軽に腰かけて雑談できるスペースを用意したりすると、狙って設定しなくても交流が起きやすくなります。
人と人との交流は『交流しなさい』と促して生まれるものではなく、自然に顔が合う頻度が上がることで少しずつ増えていくものです。
こうしたゆるやかな出会いの積み重ねが、部署を越えたつながりや新しいアイデアの芽につながっていきます。
交流は、仕組みで後押しできるものなのです。
視点③ 移転を働き方を変える機会として使う
三つ目は、移転を単なる引っ越しではなく、働き方そのものを見直す機会として使うことです。
席の持ち方や空間の使い方を、これまでの延長ではなく、目指す働き方に合わせて組み替える。
その狙いや新しいルールを社員に丁寧に伝え、移った後も声を拾いながら調整を続ける。
こうしたプロセスを経ると、社員は新しいオフィスを『自分たちの働き方を映した場所』として受け止めやすくなり、自然と足が向くようになります。
移転のタイミングは、日々の業務のなかではなかなか手をつけにくい働き方の見直しを、まとめて進められる貴重な機会でもあります。
この機会を活かせるかどうかが、移転後の定着を大きく左右します。
人が集まるオフィスをつくる4つのステップ

三つの視点を実際の移転に落とし込むには、次の四つのステップで進めるとよいでしょう。
ステップ1|現状の課題と、目指す働き方を整理する
最初に、今のオフィスで何に困っているのか、そしてこれからどんな働き方をしたいのかを整理します。
社員や経営層それぞれの声を聞き取り、実際の使われ方も確認しながら、『移転で何を実現したいか』を言葉にしておきます。
現場が感じている不便と、経営が描く方向性は必ずしも一致しないため、両方をすり合わせておくことが後の合意形成を楽にします。
ここが、その後のすべての判断の出発点になります。
ステップ2|出社の目的をコンセプトに落とし込む
次に、整理した目的を、オフィス全体のコンセプトへとまとめます。
『どんな場にしたいか』という方向性を一つの言葉で共有できると、以降のレイアウトや設計の判断がぶれにくくなります。
固定席にするか席を共有するか、どんな役割の場所をどれだけ設けるか、といった大きな方針もこの段階で固めます。
コンセプトが曖昧なまま個別の判断を積み重ねると、部分ごとに最適化された結果、全体として一貫性のない使いにくい空間になりがちです。
目的を一本の軸として通しておくことが、後の設計をスムーズにします。
ステップ3|目的に合わせて空間と動線を設計する
コンセプトが定まったら、それを空間に落とし込みます。
目的ごとに場所の役割を分け、人が自然にすれ違う動線や、立ち寄りやすい居場所を意識して配置します。
集中したい人が落ち着ける場所と、気軽に話せる場所を適切に配置し分けることで、静かに働きたいときも、相談したいときも、それぞれの居場所が見つかるオフィスになります。
将来の人数や組織の変化にも対応できるよう、柔軟に組み替えられる設計にしておくことも大切です。
想定する働き方が実際に収まるかを事前に検証しておくと、後戻りを防げます。
ステップ4|使い方を伝え、運用しながら育てる
移転して終わりにせず、新しいオフィスの狙いや使い方を社員にきちんと伝えます。
運用のルールやガイドを用意し、移った後も使われ方を見ながら調整を続けます。
移転直後は誰にとっても新しい環境に慣れるまで戸惑いがあるため、使い方の説明や、疑問に答える機会を早めに設けておくと、スムーズに定着します。
人が集まる場は一度で完成するものではなく、社員の反応を取り入れながら少しずつ育てていくもの。
この継続が、出社したくなる状態を定着させる鍵になります。
まとめ|「立地や内装」ではなく「出社する目的」から考える

移転しても人が集まらないのは、立地や内装が足りないからではなく、『何のために出社するのか』という目的から場が設計されていないことが多いためです。
出社する目的から役割を決め、偶然の会話が生まれる動線と居場所をつくり、移転を働き方を変える機会として使う——
この三つの視点を持てば、社員が自然と足を向け、交流が生まれるオフィスに近づけます。
そして、現状と目指す姿を整理し、目的をコンセプトにまとめ、空間と動線を設計し、使い方を伝えて運用しながら育てるという流れで進めれば、移転を『人が集まる場』づくりの好機に変えていけます。
オフィスは、そこで働く人たちの活動が主役です。
空間はその活動を支える器だと捉えると、何を大切にして場をつくるべきかが見えてきます。
出社したくなるオフィスづくりは、まず『自社にとって出社する目的は何か』を言葉にするところから始まります。
とはいえ、現状の課題を客観的に把握したり、目的に合った空間を設計したりするには、専門的な視点が役立つ場面も少なくありません。
オフィス環境の調査や移転計画に詳しい専門会社に相談してみると、現状の見える化から、目的に沿った場づくりの検討までを進めやすくなります。移転を考え始めた段階で、まずは自社が実現したい働き方を整理してみることをおすすめします。
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