【メトロミニッツ増刊号】転職サイトに聞きました 「笑顔」で働くための最新職場事情 リクルート - インタビュー:HR統括編集長 『リクナビNEXT』編集長 藤井 薫さん

少子高齢化は拡大し続け、コロナ禍も経験。今の職場環境にはどんな影響が?
創業から60 年以上、求職者の状況を分析してきたリクルートに聞きました。
転職理由ランキングも交え、笑顔で働ける職場の最新事情を探ります。
リクルート
HR統括編集長
『リクナビNEXT』編集長
藤井 薫さん
1988 年の入社以来、人材事業に従事。
『TECH B-ing』編集長、『Tech 総研』編集長、リクルートワークス研究所Works編集部などを歴任。
厚生労働省・採用関連調査研究会の委員も務めた。著書に『働く喜び 未来のかたち』


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この30年で労働環境は大きく変化しました。
その大きな要因が、少子高齢化と仕事のデジタルトランスフォーメーション(DX)です。
2013年頃から人手不足が常態化。
テクノロジー面ではWindows95が発売された1995年前後からデジタル社会への移行が開始し、現在は全産業でDXによる社会変革が加速中です。日本の得意芸だったものづくりも、例えば、自動車なら自動運転のソフトウエア開発など、デジタル領域がメインの仕事へと大きくシフトしました。
30年前では考えられなかった産業も生まれ、主要な企業の顔ぶれも激変。
会社の寿命より個人の職業の寿命の方が長くなる、「寿命の逆転」も生まれていると分析しています。
個人の仕事観も変わり、転職は活発化し、働く人の大移動が起きている時代です。
そんな中で最近の転職理由の傾向には、大きくふたつの観点からトレンドが見えてきます。
ひとつめは「ライフキャリアフィット」の観点。
今の会社で今後たどるキャリアを予想し、自分の希望の人生と照らし合わせる、中長期の視点です。
リクルートの調査では「先輩社員を見て未来に不安を覚えた」という若手社員が50%以上いるというデータも。
働きやすいけれどやりがいを感じない会社から離れる人も多くいます。
もうひとつの観点が「ライフスタイルフィット」。
今の労働時間や環境、給与などを踏まえ、近々起こりえる自分の人生のイベントや生活スタイルに適合するか判断する視点です。
今後、子育てや家族の介護をする必要があるとしたら、休日や夜遅くまで働くのは難しくなりますよね。
また、ここ5年で、コロナ禍とテクノロジーのさらなる発展によりリモートワークが普及し、働く人にとっては時間と場所を選ばずに働けるという意識の変化が起こりました。
オンライン上では上司と部下の関係がフラットになる面もあり、自分にとって仕事しやすい環境の新たな選択肢が生まれたとも言えます。
年代別退職理由
ここからは年代別に、転職理由の傾向を見ていきましょう。
20代で顕著なのは成長を求める方の多さ。仕事を具体的に学べる機会を大切に考えているということです。
サポートや下働きのような業務ばかりで、きちんとした仕事を任せられることがまったくなく、この先も見込めなさそうとなると、今の会社に見切りをつける人が多いようです。
つまり自分が成長できるチャンスがたくさんあるかが転職理由になっています。最近の若い世代は安定を求める傾向が強いとも言われますが、安定とチャレンジ精神は表裏一体。
心理学的な研究では「セキュアベース」、つまり安心して挑戦できる心のよりどころがないと、前向きな気持ちは持てないと明らかになっています。
30代の転職理由で注目の傾向が、自分に仕事の裁量権が与えられているかという点。
例えば、新しい営業先を開拓したい、異なる分野の商品企画に挑戦したいとなった時、自分でチャレンジの領域を決められない環境だと、会社に居続ける気力が削がれるケースが多く見られます。
また、30代になると、会社の中での自分のキャリアの道筋を見極め始める方も増加。
今までは若さゆえのバイタリティでがむしゃらに働けましたが、中年以降の姿を想像し始める時期でもあります。
また、マネージャーではなくスペシャリストをめざす方も増加。そういう人のために多様なキャリアパスを設定する会社は、笑顔で働いている方が多いと感じます。
40代は責任ある仕事を任されながら、プレイングマネージャーの役割を求められる方が半分以上いるというデータもあります。
チームの各メンバーの仕事のパフォーマンスと、各人の成功や成長を促すマネジメントも担いつつ、自分自身のパフォーマンスとマネジメントの最適化も求められ、非常に忙しい。だからこそ、チームの各人が十分に育っている環境が肝心。チームでいいメンバーと仕事できている40代は、同じ会社で生き生きと働き続けている方が多いですね。
40代を超えた先では会社の経営を担うレベルの仕事が待つことも多く、そこに至るまでの体制がしっかり支援されている企業は離職率も低い傾向にあります。
50代になると、自分の経験やそこから得た知見を、この先どう活用しようかと考え始める方が多いです。
給与が下がっても社会貢献につながるならと転職を考える人もいます。
大手ゼネコンに長く勤めた方が地方の中堅のハウスメーカーで住環境をよくするための仕事に転職したり、
自動車の部品会社でサプライチェーンの管理をしていた方が、お客様からダイレクトに感謝の声をもらえるフルーツ農園で品質管理を始めたりなど、金銭的な報酬ではなく社会貢献できることに喜びを見いだしているんですね。
年代別 転職理由ランキング
20代
他の仕事への挑戦や仕事の領域を広げたいなど、今後の自身のキャリアアップを意識した前向きな理由が上位にランクイン。
20 代では特に新しい経験や環境を求める人が多い。
1 位 他の仕事に挑戦したかった 17.4%
2 位 労働時間・環境が不満だった 15.6%
3 位 キャリアアップしたかった 13.8%
3 位 自身の働き方を見直したかった 13.8%
5 位 仕事の領域を広げたかった 12.8%

キャリアアップ志向に加えて、給与や労働時間などの労働条件がそぐわないと考えた人が増加。
30 代は年齢を重ね、仕事とライフスタイルとの理想的な関係を模索する傾向に。
1 位 キャリアアップしたかった 18.3%
1 位 他の仕事に挑戦したかった 18.3%
3 位 給与が低かった 14.0%
4 位 年収を上げたかった 12.9%
4 位 労働時間・環境が不満だった 12.9%

会社の将来性に対する不安がトップに。
自身の仕事のほかに部下のマネジメントなどを担い業務量が増えることも多く、給与や労働条件に対する不満が他年代と比較して高い。
1 位 会社の将来に不安を感じた 20.8%
2 位 給与が低かった 19.4%
3 位 労働時間・環境が不満だった 18.1%
4 位 キャリアアップしたかった 16.7%
4 位 仕事の領域を広げたかった 16.7%
4 位 自身の働き方を見直したかった 16.7%

自身の経験を踏まえて、経営方針・経営状況、上司・経営者の考え方に対して相違が生まれ、うまくいかなかったケースがうかがわれる。給与や労働条件への不満も根強い。
1 位 給与が低かった 16.4%
2 位 会社の経営方針・経営状況が変化した 10.9%
2 位 労働時間・環境が不満だった 10.9%
2 位 雇用形態に満足できなかった 10.9%
2 位 上司・経営者の仕事の仕方が
気に入らなかった 10.9%
出展:リクルートエージェント「年代別転職理由の本音」インターネットアンケート調査・2024年1月30日~2月2日

働く人が笑顔になれる環境とは?
働く人が笑顔になれる環境を考えるとき、職場の「風土」は大切です。
育児休暇制度やリモートワーク制度など、制度を充実させるのはいいことですが、
「私だけ休むと迷惑かける」と皆が考え、制度を使わないなら意味がありません。
制度以上に笑顔で働ける環境を左右するのは半径10m以内の人間関係と言われています。
遠慮せずに意見や希望を伝え合える、「風」通しのよさが求められるのです。
1人で仕事をやり遂げる達成感以外にも、「この仲間と一緒にいい仕事をやり遂げたい」という思いは大きな働く喜びになります。
だから職場には、みんなでいい仕事をはぐくめる「土」を耕していくことも必要。
「風土」をよくするにはどうしたらいいか?
ひとつの答えを、私はある会社の事例に見つけました。それはお互いに褒め合うことです。
もともとその会社ではミスをしたら責める風潮が強く、雰囲気は悪く、業績も低迷していました。
心機一転して社員同士が褒め合うことを心がけたところ、雰囲気は改善。
褒め続けているとだんだん褒めるところがなくなり、今度は褒めるために相手のことをもっと知るようになったそうです。
結果、社員同士がお互いに関心を持つようになり、対話が増え、職場の風通しがよくなり、離職率も改善されました。
個人の価値観が多様化した時代、お互いに関心を持ち、相手を知るコミュニケーションが重要なんです。
メトロミニッツ2025年3月1日発行 増刊号 特集「サラリーマンっておもしろい Vol.2」より転載
Text: ATSUSHI SATO
IIllustration: YURI FURUSAWA

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