2025.02.14

物言う株主の脅威!遊休不動産が企業買収のターゲットに

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不動産鑑定

遊休不動産を保有していることで、物言う株主に狙われることも

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近年、遊休不動産の増加が社会問題として取り上げられることがあります。
遊休不動産は、建物倒壊、不法投棄、不法占拠、不審火、害虫の発生による近隣トラブル、
地域経済の活気低下など、社会問題を引き起こす要因になります。

国土交通省が2024年12月23日に発表した

「令和5年法人土地・建物基本調査」によると、
法人が所有する不動産のうち、遊休不動産と同義の「低・未利用地(駐車場、資材置場、利用できない建物及び空き地の合計)」は
全国に53.2万件も存在します。
現在の遊休不動産のうち、「5年前から遊休不動産」だったものは約37.3万件と約70%を占め、
多くは長期的に遊休不動産の状態となっています。
なお、直近5年間で遊休不動産は12.8万件(不詳3.1万件を除く)も増加しています。

また、「5年前から遊休不動産」で、今後も「売却等・転換の予定はない」と回答したのは約68%です。
つまり、法人が所有する「遊休不動産」の多くは、今後も利活用が行われることなく
「遊休不動産」のままである可能性が高いということになります。

遊休不動産を放置しておくことで考えられるリスクの一つに、
保有する遊休不動産の売却や活用を考えるアクティビスト投資家により、同意なき買収の対象になることです。
アクティビスト投資家とは、株式を一定程度取得したうえで、その保有株式を裏付けとして、
投資先企業の経営陣に積極的に提言を行い、企業価値の向上を目指す投資家のことで、物言う株主ともいいます。

下記の同意なき買収の事例は、保有資産を有効に活用しきれていないことが狙われた背景にあります。

事例①東京ドーム
2020年1月、東京ドームの発行済株式9.61%を保有する香港投資ファンドのオアシス・マネジメントが
「より良い東京ドームへ」と題する経営改革案を公表し、
現状の東京ドームは、ドームやホテルなどへの投資が不十分であり「宝の持ち腐れ」と非難しました。

ドームへのデジタル看板広告導入やホテル・遊園地の運営効率化など、
オアシスの改革案を実行すれば収益改善や株価上昇に寄与すると提言しました。
オアシスはいわゆるアクティビストであり、経営陣に対して揺さぶりをかけた格好です。

(出典:東洋経済

事例②株式会社ワキタ
2020年11月より東京を拠点とするストラテジックキャピタルは、
建設・エンジニアリングのワキタの発行済株式の保有割合を高めております(2024年8月時点で8.7%) 。
ワキタに対して、巨額の賃貸等不動産を保有していることで、資本効率性が低下し、株主価値が毀損しているため、
賃貸物件の売却を求めました。

ワキタは、2023年2月末時点で、時価で566億円もの賃貸等不動産を保有しており、
これはワキタの時価総額の約70%にも及びます。
また、ワキタのPBRは2010年以降、解散価値である1倍を長期的に下回っており、
経営方針は株主価値の向上に繋がっていないと主張しています。

(出典:bloomberg

遊休不動産は、負の資産

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土地や建物の所有者には、固定資産税や都市計画税の税負担が毎年課せられます。
それは使用しなくなった不動産の所有者に対しても同様です。
さらに不動産の状況に応じて、管理費等の費用負担が発生する場合もあり、
企業にとっては、何ら収益を生まない不動産に無駄な投資をしていることになります。

資産を効率的に活用していないことに対して、特に上場会社は株主から改善を追求される可能性があり、
経営責任を問われる事態にまで発展することも考えられます。

遊休不動産とは?

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「遊休不動産」とは、店舗やビル、工場、倉庫等、ほとんど使用されていない住居用以外の不動産を指します。
企業が所有していることが多く、商業用不動産や農地、山林などが含まれます。
遊休不動産が増加してきた背景には、
新型コロナウイルスの影響による業績不振、長引く不況、建物の老朽化等といった原因が挙げられます。

物言う株主(アクティビスト投資家)の増加

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アイ・アールジャパンホールディングス「決算説明会資料2025年3月期 中間期」によると、
2024年10月末時点で73のアクティビスト・ファンドが日本に参入し、2014年からの10年間で9倍まで増加しています(図1)。

今後ますます、企業が保有する資産を効率的に活用し、収益を生み出す構造になっているか投資家からは厳しい目が向けられます。
なお、アクティビスト投資家による株主提案の件数は、2014年の4件から、2024年10月末時点で66件と約16倍に増加しています。

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(図1)出所:株式会社アイ・アールジャパンホールディングス「決算説明会資料2025年3月期 第2四半期」

遊休不動産は単独での時価評価が必要

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遊休不動産は、賃貸等不動産に該当し、単独での時価評価が必要になります。
時価に比べて、簿価が著しく低廉なまま放置していることで、資産の非効率性が可視化され、
物言う株主に狙われる一因になることもあります。

まとめ:遊休不動産の資産価値を知り、その可能性を検証してみませんか?

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前述のとおり、遊休不動産は所有者にとっても、地域経済にとっても負の資産であるため、
それを解消するため、まずは資産価値を再評価し、将来における利用可能性を検証してみてはいかがでしょうか。

所有不動産に関する全体最適を再検討した結果、利用価値がないと見なされていた遊休不動産にも
新たな利用価値を再発見できるかもしれません。
また、再検討したうえで、将来においても遊休不動産は利用価値がないと判断が出来れば、
売却して得た資金を本業に投資することで、投資効率が向上します。

当社には、事業用不動産の専門家である不動産鑑定士が在籍しております。
不動産事業を50年以上手掛けており、事業用不動産を専業としの取り扱いを長年続けてきた実績もありますので、
家賃・地代のことでお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。




Writer's Profile

執筆者
スターツコーポレートサービス株式会社
中川 貴雄(なかがわ たかお)

経歴

2007年3月近畿大学大学院総合理工学研究科修士課程修了。
同年4月スターツグループ入社。企業向けの不動産投資、売却のアドバイザリーに従事し、2020年9月に不動産鑑定士に登録。
2023年7月 東京都不動産鑑定士協会 災害支援対策委員・総務財務委員に、
2024年4月 東京都不動産鑑定士協会の推薦を受け、東京都武蔵野市の固定資産評価審査委員会委員に就任。
不動産のプロとして、数多くの企業の資産コンサルティングを手掛けている。

不動産鑑定士




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