賃貸等不動産の開示、適切に対応できていますか? — 有価証券報告書における時価評価・減損検討のための不動産鑑定サービス —

有価証券報告書で求められる「賃貸等不動産」の開示

「賃貸等不動産」とは、企業が保有する不動産のうち、賃貸収益や売却益(キャピタル・ゲイン)の獲得を目的として
保有するもののことをいい、将来の具体的な使用予定がない遊休不動産は、会計基準上の「賃貸等不動産」に該当し、
有価証券報告書における注記が求められます。
金融商品取引法に基づく開示制度では、投資者保護の観点から適正な財務情報の提供が強く要請されており、
特に以下の点が重要となります。
●時価の開示
賃貸等不動産については、その期末における時価を注記することが原則として必要です。
帳簿価額と時価との差額は、企業の財政状態を評価する上で重要な投資情報となります。
●減損の要否判定
収益性の低下といった減損の兆候がある場合、帳簿価額を回収できるかを判定するために、
減損会計の適用を検討しなければなりません。
●経営上の意思決定
遊休不動産などは、保有し続けるか、売却・賃貸・再開発等を行うか、企業価値向上のための合理的な意思決定が求められます。
これらの対応を社内のみで行った場合、時価算定の根拠や評価プロセスの客観性が問われ、
監査法人との見解に相違が生じたり、開示情報の信頼性が低下したりするリスクが懸念されます。
(※)賃貸等不動産に含まれる遊休不動産とは:
企業が保有しているものの、本来の事業活動に直接使用されておらず、かつ将来にわたって
具体的な使用予定がない不動産を指します。
このような不動産は、保有を継続しても事業上の収益を生み出さないため、賃貸や売却によるキャッシュ・フローが
企業価値に直結すると考えられます。そのため「賃貸等不動産」に含められ、時価開示の対象となります。
賃貸等不動産の時価を自社算定することに伴う懸念

有価証券報告書は企業内部の情報を外部に開示する役割を担っており、企業が保有する賃貸等不動産の時価について、
自社で算定すること自体に法的な問題や制約はありません。
しかし、算定根拠や評価プロセスの客観性が十分に確保されていない場合、開示情報の信頼性が低下したり、
監査法人との見解に相違が生じたりするリスクが懸念されます。
特に以下の点が懸念となる可能性があります。
●客観性・信頼性の欠如
自社算定では第三者の視点が入らないため、恣意的な評価が入り込むリスクがあります。
また、投資家や監査法人からの信頼性が低下し、企業価値の判断に疑念を持たれる可能性があります。
●投資家への誤解・情報の非対称性
適正な時価が開示されないと、投資家は企業の財務状況を過大評価または過小評価する可能性があります。
情報の非対称性が生じ、資本市場の健全性を損なう要因となります。
●監査対応の困難化
監査法人は開示された情報の妥当性を検証する必要がありますが、自社算定では裏付け資料が不十分なことが多く、
評価手法が不透明になりがちです。
結果として、監査意見に影響を与える可能性があり、通常の“適正”という評価が得られず、「限定付き意見」となることがあります。
不動産鑑定評価を活用するメリット

客観的な第三者である不動産鑑定士による評価を導入することで、
財務報告の信頼性と経営判断の質を大きく向上させることが可能です。
●時価評価の客観性を担保
不動産鑑定評価書は、会計監査にも耐えうる、時価の客観的な根拠として利用できます。
●減損会計適用における合理的な根拠
回収可能価額の算定において、鑑定評価は減損損失を認識・測定する際の有力な証拠となります。
●遊休不動産の戦略的意思決定を支援
売却・賃貸等の選択肢について、鑑定評価に基づく事業採算性や市場性の分析が、最適な活用方針の決定を後押しします。
当社の不動産鑑定サービス

当社では、上場企業をはじめとする法人のお客様向けに、会計基準や税法を深く理解した不動産鑑定サービスを提供しています。
●有価証券報告書・決算開示を目的とした時価評価
●収益ビル・遊休地・社宅・工場・倉庫など多様なアセットタイプに対応
●既存の鑑定評価に対するセカンドオピニオン(評価の妥当性検証、補足意見の提示)
ご相談は無料で承っております。
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Writer's Profile

- 執筆者
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スターツコーポレートサービス株式会社
中川 貴雄(なかがわ たかお)
経歴-
2007年3月近畿大学大学院総合理工学研究科修士課程修了。
同年4月スターツグループ入社。企業向けの不動産投資、売却のアドバイザリーに従事し、2020年9月に不動産鑑定士に登録。
2023年7月 東京都不動産鑑定士協会 災害支援対策委員・総務財務委員に、
2024年4月 東京都不動産鑑定士協会の推薦を受け、東京都武蔵野市の固定資産評価審査委員会委員に就任。
不動産のプロとして、数多くの企業の資産コンサルティングを手掛けている。
不動産鑑定士
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カテゴリ:
- 企業不動産戦略
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