会社移転に必要な手続きとは?各種届出や注意点について

この記事では、会社移転に必要な手続きについて解説します。
事業拡大や経費削減を理由に、会社を移転するケースは多いですが、複雑な手続きが多いです。
とくに法人会社は各機関への届出はもちろんのこと、定められた期間内に行わなければならない手続きもあります。
移転先でスムーズに業務を開始するためにも、最後まで読んで参考にしてみてください。
会社移転とは?

まずは、会社移転の概要とメリット・デメリットを解説します。
(1)概要
会社移転とは、会社の所在地を変えることです。
新しいオフィスへ引っ越す際の手続きだけでなく、各行政機関へ移転手続きを行わなければなりません。
手続きを怠った場合、業務の遂行、取引先、自社の業績にまで影響を及ぼします。
さらに、移転手続きのなかには罰則が設けられている届出があり、会社の評価・信用につながる重要な問題です。
とくに法人会社は複雑な手続きが非常に多いため、計画的に取り組むことが大切です。
(2)メリット
会社移転には、企業にとって多くのメリットがあります。
移転を検討する際には、これらのメリットをしっかり理解することが重要です。
では、具体的な利点を順に見ていきましょう。
1. 作業効率の向上
交通アクセスの利便性など、従業員にとって働きやすい環境が整ったオフィスへ移転する場合、
作業効率・生産性の向上に期待できます。
理由は、働きやすい環境は従業員の集中力とモチベーションのアップをもたらすからです。
これらは、残業の削減などのコスト面のメリットにもつながります。
2. 企業ブランドの強化
清潔感のある洗練されたデザインのオフィスへの移転、ビジネスの中心地である都心部への移転は、
顧客や取引先からの印象を高める効果があります。
会社のイメージアップ・ブランド力の強化につながるため、事業拡大にも効果的です。
3. 新しいビジネスチャンスの創出
会社を移転することで、これまでアクセスできなかった新しい市場や顧客にリーチできる可能性が高まります。
特に、都心部やビジネスの中心地への移転は、新しい取引先の獲得やビジネスチャンスの拡大に直接つながることが期待されます。
たとえば、商業エリアに近いオフィスへ移転することで、顧客との接点が増え、商談やミーティングの機会が増加するでしょう。
また、地域や業界のコミュニティに積極的に参加することで、ネットワーキングの機会が増え、
ビジネスパートナーとの連携も強化できます。
これにより、新たなプロジェクトや取引の可能性が広がり、企業の成長を加速させることができます。
4. 従業員のライフワークバランスの改善
オフィスを移転する際には、従業員の生活環境に配慮することも重要です。
例えば、通勤時間が短縮されるエリアや、公共交通機関へのアクセスが良い場所にオフィスを構えることで、
従業員の通勤ストレスを軽減できます。
また、周辺に飲食店や商業施設が充実しているエリアであれば、昼食や仕事後のリフレッシュが容易になり、
従業員のライフワークバランスの改善につながります。
さらに、オフィス移転により、快適な作業環境を提供することも可能です。
自然光が入るオフィスや、リラクゼーションスペースを設けた環境は、従業員の精神的な健康に良い影響を与え、
長期的なパフォーマンスの向上が期待できます。
5. より柔軟な労働環境の構築
現代の働き方の多様化に対応するため、移転を機に、より柔軟な労働環境を整備することもできます。
これにより、従業員の働き方に柔軟性を持たせると同時に、企業としての競争力も高めることができます。
また、テクノロジーを活用したスマートオフィスを設計することで、会議やコミュニケーションの効率化を図り、
業務全体のスピードアップにもつながります。
たとえば、会議室の自動予約システムや、オンライン会議ツールの導入は、業務プロセスを大幅に改善します。
6. 法的・規制面での有利な条件
地域によっては、企業に対してさまざまな優遇措置や税制面でのメリットが提供されることがあります。
例えば、一部の自治体では企業誘致のために税金の減免措置や補助金を提供しています。
こうした地域にオフィスを移転することで、経済的なメリットを享受することが可能です。
また、特定の産業クラスターに近い地域へ移転することで、業界関連の支援やインフラの整備など、
業務を円滑に進めるためのサポートを受けられることもあります。
このような法的・規制の優遇措置を活用することは、長期的に企業の運営コストを削減するだけでなく、
競争力を強化する手助けにもなります。
(3)デメリット
会社移転には以下の3つのデメリットも存在します。
1. 多額の移転費用がかかる
会社の移転には多額の費用がかかります。従業員が多いほど移転費用は高額です。
また、会社移転に伴う手続き費用、旧オフィスの現状回復費など、様々な部分で費用が発生します。
2. 複雑な移転手続きが多い
会社移転には複雑な手続きが多いです。
会社の規模や従業員の数が多くなるほど手続きは複雑化します。
また、移転手続きは定められた期間内で行わなければなりません。
このように、移転手続きには細かな規定と罰則が設けられている非常に面倒なものです。
3. 会社移転には時間と労力が必要
会社移転は、移転先のオフィス探し、スケジュール策定、株主への報告書作成(議事録)など、
やるべきことが非常に多いプロジェクトです。
また、通常の業務を行いながら移転作業を行う必要があるため、時間と労力が大きな負担になる恐れがあります。
通常業務への影響を避けるためにも、移転プロジェクトチームを組織して適切に行うことが大切です。
会社移転に必要な手続き

会社移転の際に必要な手続きを大きく2つに分類して解説します。
どれも必要な手続きになるため、会社移転を検討中の場合は参考にしてみてください。
(1)オフィスに関する各種手続き
会社移転はオフィスの引っ越しを指します。
必要な手続きは、新オフィスと旧オフィスのそれぞれに異なる手続きが必要です。
1. 新オフィスに関する手続き
移転先が確定した場合、新オフィスの契約手続きを行います。
契約書へのサインと敷金などの料金を支払うだけの簡単な手続きですが、
オフィスとして契約する際は以下の書類の提出が必要です。
●会社謄本
●会社印鑑証明書
●会社実印
必要書類に不備があるとオフィス契約を結ぶことができません。
移転の時期がずれ込むなど、業務に支障がでる恐れがあるため注意が必要です。
2. 電話・ネットワーク環境の移転手続き
会社の代表番号やメールアドレスは、解約ではなく移転手続きが必要です。
旧オフィスで使用していた電話番号やメールアドレスを継続することで、顧客や取引先とのトラブルを防ぐことできます。
しかし、電話番号に関しては電話局の場所によって変更せざるを得ないケースがあります。
その際は、取引先への案内が必要です。
また、移転後すぐに業務を開始するために、インターネット環境やセキュリティの移転と、
新オフィスでの開通手続きが必要です。
3. 旧オフィスの解約に関する手続き
会社移転が決まり次第、旧オフィスの解約手続きを行います。
しかし、旧オフィスの解約は契約内容によって解約通知を出すタイミングが決められています。
一般的には退去する半年前までの通知が基本です。
また、解約通知を出した後は、退去日までにオフィス内の原状回復工事を行わなければなりません。
工事の規模によっては時間がかかるケースがあるため、退去までの期間に余裕を持たせることが重要です。
(2)移転登記に関する各種手続き
会社の本社を移転する場合、現在の登記情報を変更する手続きが必要です。
複雑かつ各機関への届出が多いため、以下を参考にしてみてください。
●法務局
本社を移転する際、法務局にて移転登記の手続きが必要です。
しかし、旧オフィス都心オフィスの法務局管轄エリアによって申請書類や申請場所が異なります。
以下に移転登記の必要書類等をまとめました。以下の表を参考に移転登記を行ってみてください。
移転登記に必要な書類
必要な書類 | 申請場所 | |
同じ法務局の管轄内で移転する場合 | ・本店移転登記申請書 ・株主総会議事録 ・株主リスト ・取締役会議事録 |
旧オフィス所在地の管轄法務局 |
異なる法務局の管轄に移転する場合 | ・本店移転登記申請書(旧法務局提出分) ・本店移転登記申請書(新法務局提出分) ・株主総会議事録 ・株主リスト ・取締役会議事録 ・印鑑届書 |
旧オフィス所在地の管轄法務局 |
●税務署
会社移転をする際は、所轄の税務署で法人税と従業員の所得税の徴収を確定させるための手続きが必要です。
主な手続きは「異動届書」と「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」の2種類があります。
それぞれ提出期限が決められているためご注意ください。
移転登記に必要な書類
区分 | 提出期限 |
異動届出書 | 移転後すぐ |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書 | 移転後1ヶ月以内 |
●労働基準監督署
従業員がいる会社は労働保険の加入が義務付けられています。
会社移転に伴い、労働基準監督署にて変更のあった日の翌日から起算して10日以内に
「労働保険名称・所在地等変更届」の提出が必要です。
●都道府県税事務所
移転登記をした場合、都道府県税事務所にて「異動届出書」「法人異動事項申告書」のいずれかを提出する必要があります。
しかし、移転先が同じ都道府県かどうかで提出先が異なるため注意が必要です。
移転登記に必要な書類
移転先が同じ都道府県の場合 | 移転後の都道府県税事務所に提出 |
移転先が他の都道府県の場合 | 移転前・移転後両方の都道府県税事務所に提出が必要 |
●ハローワーク
労働保険に加入している会社は、労働基準監督署のほか、移転先のオフィスを管轄するハローワークへ
「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出する必要があります。
また、変更のあった日の翌日から起算して10日以内にハローワークの窓口へ提出するか、
電子申請にて提出しなければなりません。
会社の移転手続きに関する注意点

会社の移転手続きには注意すべきことがあります。
移転先での事業運営に影響を及ぼす可能性があるため、以下の3つに注意が必要です。
(1)会社の移転登記は移転後2週間以内に行う
会社(本社オフィス)を移転する際は、移転登記が必要です。
移転登記は、移転後2週間以内に行わなければなりません。
万が一、期限内に移転先住所の変更手続きを行わない場合は「登記懈怠(とうきけたい)」に該当し、
100万円以下の罰金を科せられる可能性があります。
(2)期間に余裕を持たせて各種手続きを行う
会社の移転登記のほかにも、期限が設けられている手続きは多いです。
また、各種手続きに必要な書類を集めるためには時間がかかる場合があります。
会社移転の成功、ならびに移転後の業務開始をスムーズに進めるためにも、
移転に関する手続きは機関に余裕を持たせて行うことが大切です。
(3)移転プロジェクトチームを組織して取り組む
会社移転を円滑に進めるために、移転プロジェクトチームを組織することが大切です。
会社移転は、移転先オフィスの選定や各種手続きに多大な時間と労力を必要とします。
通常業務と並行して移転業務に取り組むのは従業員への負担が大きく、手続きにミスが生じるかもしれません。
プロジェクトチームであれば、移転に関する複雑な手続きや株主総会向けの議事録作成などを迅速に進めることができます。
まとめ

会社移転は複雑な手続きが非常に多く、1つのミスが移転先での事業運営に影響を及ぼします。
単に荷物を運ぶだけの引っ越しと異なり、時間と労力が必要な業務です。
会社移転を検討している企業さまは、移転チームを組織し、期間に余裕を持たせて取り組むことが大切です。
今回紹介した内容を参考に、会社移転を成功させてみてください。
手続き関係は複雑で疑問に思うこともあると思います。
その際はお気軽にご相談ください。
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スターツコーポレートサービス株式会社 COPPO!編集部
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